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【第1部】 第25話 お姫様登場①

last update Last Updated: 2025-07-12 06:01:06

 家に帰ると、待ちわびていたヘンリーが私にダイブしてくる。

 案の定、すぐさま龍の返り討ちにあい、ヘンリーは床にのされた。

 なんで、学習しないかな……。

 私は玄関の床で倒れ込んでいるヘンリーに、手を貸そうとしゃがみ込む。

 すると、遠くから激しい足音がこちらへ近づいてくるのが、私の耳に聞こえた。

 どこからやってきたのか、突然姿を現すアルバート。

 勢いがよすぎて、一度私たちの前を通り過ぎてから、また戻ってきた。

 彼の目が鋭く龍に向けられると、飛び蹴りを放つ。

 それを軽く受け止め、間合いを取った龍はアルバートを睨みつけた。

「貴様……また王子に無礼なことを!」

「ふん、そいつがお嬢によからぬことをするからだ」

 二人は睨み合い、ふっと笑う。

 それが戦闘開始の合図だった。激しい戦闘が玄関で繰り広げられる。

 私は二人の対戦を眺めつつ、また大きなため息をついた。

 これは、いつものパターンだ。長くなるな、と判断した私は、もう三人のことは放っておくことにする。

 一人で考えたかった私は、とりあえずお風呂に入ることにした。

 お風呂って、考えごとにむいてると思うんだよね……。無心になってゆっくりと思考できるから。

 脱衣所から風呂場に入ると、お湯の温かな湯気に包まれる。

 柔らかな湯気が体に触れると、ほっと心が解きほぐされていくように感じられた。

 あー、なんだか癒される、この瞬間。

 体を洗い終えると、足先からゆっくりと湯舟に浸かった。

「はあー、やっぱりお風呂って気持ちいーっ」

 ゆったりと湯につかりながら、一息つく。

 私が思考に集中し始めたそのとき、お湯から泡がポコポコと現れ始める。

 驚いた私がその泡を凝視していると、どんどんと泡の数が増えていく。

 え、まって、このパターンって。

「ちょ、ちょっと!」

 私は次の事態に備え、身構えた。

 次の瞬間、突如としてお湯が沸騰し

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Comments (1)
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憮然野郎
また新たなヘンリーファミリーが...️ 祖父も即OKしそうだし、流華の日常はますます賑やかになりそうですね...
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